エナメル塗料について

アメリカでは種々の有機溶剤への規制、または自主規制のためか、趣味の世界ではエナメル塗料と水性アクリル塗料が主流です。

日本では真鍮工作においては乾燥の速さと塗膜の強さもあってラッカー系塗料が主流ですが、遅い乾燥時間につきあう余裕とエナメル塗料の性質、使い方を理解すれば、湿気に影響されにくい性質から日本向けの塗料だと思います。特にアメリカ型鉄道模型を趣味にする方にとっては、フロッキル、スケールコートの各鉄道模型用カラーは調色の手間がはぶけ、さらにプラスチックにも安全と最適な塗料です。

私も日本からラッカー塗料を持ってくる、あるいは送ってもらってラッカーで塗装を行ってきましたが、毎回色の選択で困ってしまう、税関審査にびくびくなんてことを繰り返すのもそろそろ潮時と思い、本格的にエナメルに移行し始めました。ここでは、そのエナメル塗料に関して私なりに説明します。慣れれば、薄いきれいな塗膜を作ることができます。


 

エナメル塗料使用時の注意点

エナメル塗料はラッカー系の塗料のように溶剤が揮発することによって塗装膜ができるのではなく、顔料の樹脂が空気と反応することによって塗装膜を形成します。従って表面が乾燥したからと言って不用意に触ると指紋がべったりなんてこともありますので、十分に時間を置いて次の作業に移りましょう。スケールコートの説明書には摂氏約80度のオーブンで2時間熱を加えて乾燥させるとありますが、怖くてやったことがありません。せっかちな方にはあまり勧められない塗料ですが、溶剤に含まれる有毒な成分が少ないのでラッカーよりは健康的な塗料と言えます。水性アクリル塗料が一番安全なのですが、下地処理が非常に面倒なので私は使用していません。

エナメル塗料は少量の溶剤で粘度を落とすことができるため隠蔽力が非常に高く少ない吹き付け回数できれいな塗膜を作ることができます。特にリベットが並んだ車体、角のある車体などの塗装には非常に効果的です。

エナメル塗料は先に説明しましたように、空気に化学反応をして塗膜を形成しますので、未使用の塗料でも一度固体化してしまったものはシンナーで溶かしても二度と使い物にはなりません。不必要な塗料の固体化を防ぐため、筆塗りの際には他の容器に出して使い、使い終わったらすぐに蓋をするようにしてください。エアーブラシを使うときには、必ずティッシュペーパー他で濾過して使ってください。目に見えない乾燥した樹脂を取り除くことができます。これを怠るときれいな塗膜は期待できません。

形成された塗装膜はラッカーほどは強くありませんが、実用上問題ありません。気になる方は金属用エッチングプライマーを塗布してから塗装することをお勧めします。お使いのエッチングプライマーがエナメル塗料と変な反応を起こさないか事前にテストしてください。私はエナメル塗料を使うときは、エッチングプライマーがせっかくのエナメル塗料の薄い塗膜の利点を阻害しますので使用していません。代わりと言ってはなんですが、発色を良くするためと、下地の処理状態を確認するために、フロッキル Gray Primer を塗装しています。フロッキルには、他に Zinc Chromate Primer と言う物がありますが、これはプライマーとしての効果はなく、さらに通常のカラーよりも食いつきが悪いと言う話ですので、Gray Primer のほうがいいと思います。

エナメル塗料はいろいろなブランドが出ていますが、顔料の樹脂が異なるため、基本的に他社ブランドの製品との混合はできません。例えば、フロッキルとスケールコートで調色なんてことはできませんので注意が必要です。

重ね塗りですが、エナメルはほぼどんな塗料の上に重ねても問題ありません。そのため、私を含めてラッカー塗装の上にエナメルでウェザリングと言う方が多いです。もちろん完全に塗膜が出来上がったエナメル塗料の上にエナメルを重ねても問題ありません。ただし、エナメルの上にラッカーを塗装するとほぼ確実にエナメル塗料がシンナーで浮き上がって、ちりちりになってしまいますので、絶対にラッカーをエナメルの上に重ねてはいけません。

希釈率、吹き付けのコンプレッサー圧は機材の種類や塗装する素材にもよりますが、フロッキルですと、一般的につや消しの場合、塗料3にたいして薄め液1、グロスカラー(つやあり)の場合、塗料3に対して薄め液2を使用します。多くとも1対1の希釈率程度で、15〜25 psi 程度の低目のエアー圧で吹き付け塗装をします。スケールコートの場合、少し粘度が高いので、2対1程度の希釈率から始めるのがいいと思います。

薄め液は専用のものが市販されていますが、アメリカ国内ではホームセンターでペイントシンナーとして売られているエナメル塗料用のシンナーが使用できます。エアーブラシ、筆、その他の道具の洗浄にはラッカーシンナーを使用します。ラッカーシンナーを薄め液に使用する方もいるようですが、私はラッカーシンナーの蒸発時に水分が付着する危険を避けたいので使用していません。

フロッキル アメリカでもっとも広く鉄道模型用塗料として普及しているフロッキル(FLOQUIL)エナメル塗料です。

Gross と明記してある物を除いて基本は完全なつや消しです。つや消しのままではインレタ、デカールも付きませんし、あまりにもつやがなく実感的ではありません。Graze を塗料と同量入れて、半つやになります。

さらにつやあり仕上げが必要なときには、Crystal Coat か、High Gross と言うオーバーコートを使用します。High Gross は乾燥が遅いので Crystal Coat を勧めます。

つや消し仕上げの場合は、Flat Finish と言うオーバーコートを使用します。

乾燥時間は一般に数時間ですが、私はマスキングテープを使うときには数日置いています。特に筆塗りの時には十分な乾燥時間をおきましょう。

テスター、モデルマスター こちらはプラモデル向けの調色の Model Master, Testor ブランドのエナメル塗料です。実は、フロッキルもこれらのブランドと同じ Testor 社の物です。

原色が欲しいとき、あるいはフロッキルカラーにいい色が見つからないときに使用しています。性質はフロッキルと大差ありません。

フロッキルを含めた Testor 社のホームページは、こちらです。

こちらは Oゲージメーカーの Weaver が販売している鉄道模型向け塗料スケールコートです。スケールコートには、I と II があり、写真の物は、スケールコート I で、真鍮を含めた金属素材、木材向けエナメル塗料です。スケールコート II は、溶剤が異なり、プラスチック向けとなっています。

乾燥時間が非常に長く、メーカーでは、塗装後2時間、80℃で加熱、焼き付け塗装を勧めています。

同じ鉄道模型向け塗料の FLOQUIL と比べると、価格面で安いです。FLOQUIL は基本つや消しですが、こちらは基本つや有りになっています。

Scalecoat を含めた Weaver Models 社のホームページは、こちらです。

左は、日本の田宮のもの、右はイギリスのハンブロールです。

田宮のものは、このクリヤーレッドを標識灯のレンズの色入れのために筆塗りのみで使用しています。

ハンブロールは発色がきれいなのですが、入手しづらいのと高価なためあまり使用していません。吹き付けるときは、希釈率 1:1 程度で使用しています。


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