スクラッチビルドの勧め
京阪和歌山支店 100 風の
自由形路面電車

完成しました

[完成時の工作状況]を見る

インターネットの普及でいろいろな方のすばらしい模型作品を
工作方法も含めて参照できるようになりました。

私には15年以上の模型趣味ブランクがありましたが、
この趣味に戻ってきたときに完成品、キットの価格に
驚きました。確かに物価上昇してますので、高価になって
いてあたりまえなのですが、どう考えても物価上昇率以上に
鉄道模型の世界は高くなっていると感じました。

よくよく見ると、しばらく模型の世界を離れているうちに
機関車にしても、電車にしても、ディテールがすばらしく
また、走りも静粛になっているなど、格段の進歩をしていました。

さらにこんな車輌まで模型化されてるよ、ってな感じで
驚くことばかり。模型店の数も増えた気がする中で、
懐かしい名前の店が消えていたりと、浦島太郎の気分を
そこここで味わいました。

中でも一番気になったのは、価格高騰と、細密化が
思い切り進んだので、これから模型工作をしようと
する人にとって、敷居が高くなったのではないかと
思いました。確かに、エンドウ、カツミのキットは
組みやすいと思いますが、初めて真鍮キットを
組む方にとっては、勇気のいる買い物だと思います。

細密化の影響は、ここまでやらないと駄目なのかな、と
初心者が恐れてしまう結果になっているのではないかと
危惧しています。昔も確かにディテールたっぷりの製品、
作品はたくさんありましたが、その一方で、つぼみ模型
の製品のように一風変わった味のある模型もありました。

私は決してキット工作を否定しません。私自身
キットビルダーでもありますし、キット工作には
キット工作の魅力がたくさんあります。

同様にスクラッチビルドの世界には、
自分の思い通りに作れる、設計の面白さ、
キットにない車輌が作れる、などなどキット工作には
ないいろいろな面白さ、魅力があります。

前置きが非常に長くなりましたが、真鍮でスクラッチビルドを
経験してみたい、うまい下手抜きに工作をちょっと試してみたい、
そんな方の参考になるような工作記事を書いてみようと思います。

潜在的にやってみたいと思ってる方は多いと思います。
ただ、みなさん、難しいとかお金がかかるとか、やる前に
あきらめている方が多いのだと思います。そんな方に
ちょっとの勇気と、お小遣いを使って、
作る楽しみを味わってもらいたいと思います。

なお、ペーパーによるスクラッチ工作も立派な工作方法でして、
真鍮とどっちがいい、なんて優劣はつけられません。あるいは、
プラ板といった別の素材もあります。みなさんのお気に入りの
素材、工法でいろいろ試してもらいたいと思います。

と言うことで、スクラッチ工作の勧め、
ゆっくりと時間をかけて、工程ひとつひとつを
わかりやすく説明していくつもりです。

わからないことや、こういうやり方もあるんじゃないか、
と言ったご意見、それから感想ありましたら、掲示板、
メールでどんどん送ってください。

作る楽しみをぜひ多くの人に味わってもらいたいと思います。
明日のスクラッチビルダーは、あなたです!

京阪和歌山支店 100 竣工図 2005年1月24日

初心者の方にもとっつきやすいように、特殊な工具を使用しなくても済む工法を取るつもりです。と言うことで、折り曲げ機なしで車体を作ります。この工作でうまく行ったら、ぜひ折り曲げ機の購入を検討してください。私の使用しているものでしたら、送料込みで、1万円ほどで購入できます。

なるべく簡単に作れるものをいろいろ考えた結果、下回りは、アルモデルの簡易型2軸電車下回りを使用し、車体に専念して工作をすることにしました。この下回りは、動力にホイールベース 26mm のパワトラを使用するもので、ブリル21Eタイプの形状になっています。

ブリル21Eは、ご存知のように広く路面軌道車輌で使われた台車です。そのブリル21Eを使用した車輌をいろいろと物色した結果、かなりマイナーですが、京阪和歌山支店(元の和歌山水力電気、後の南海電鉄和歌山軌道線)の 100 型をプロトタイプに選択しました。4両製造された後、2両は小倉電気軌道(後の九州電軌、そして西鉄)に譲渡されています。

ホイールベースの違い(実車は、1/80 で約 28.5mm)や、側板の板張り(すじ表現)を省略するつもりですので、自由型とします。自由型ですと、多少工作ミスを犯しても自由型だからと言い切れる利点もあります。

車体は非常にシンプルですが、竣工図によると丸窓もあってなかなか頼もしいスタイルです。竣工時のスタイルでの工作は、車輌竣工図集の図面(写真)だけが頼りです。図面は、フィート/インチサイズで記述されていますので、注意が必要です。更新後の姿は、丸窓もなくなりヘッドライトの移設、標識灯、行き先案内表示の増設が行われたようです。

使用するパーツにもよりますが、総予算は、出来のよいトローリーポールを使用するか、どうかでかなり変わり、5000円から10000円の間です。

ケガキ用工具 まず、最低限必要な工具を揃えてください。ことわざどおりには行かず、弘法筆を選びます。精度の悪い工具は精度の悪い作品を作り出しますので、大事に使えば一生使えるものと思って、それなりの精度のものを購入してください。ただ極端に精度の高い、つまり高価なものを購入する必要はありません。

まずケガキに必要な工具を写真上から紹介します。

ノギス: HOサイズの場合、200mm のものが1本あればいいでしょう。

ケガキ針: 市販のケガキ針は太いので、千枚通しのように細いものを砥石でといて使ったほうが使いやすいです。ポンチの代わりにも使います。

定規: ステンレス製の精度のよいものを用意しましょう。

デバイダー: 同じ長さを正確に移す、2点の中点求めるなど、工夫次第でいろいろな用途に使えます。脚のしっかりとしたものを選んでください。写真は、スターレット製のスプリングデバイダーです。いいものは自然と美しい〜

スコヤ: 正確に直角をけがく、測るための必需品です。精度のよいものを選んでください。直角がずれるといけませんので、取り扱い注意。

油砥石: ケガキ針、デバイダー、ノギスや、ドリル刃などを研ぐための必需品です。油も忘れずに。

切断、穴あけ工具 切断、穴あけに必要な工具です。

糸のこフレーム: 握りやすく、また刃のはり具合を調節できるものが使いやすいです。

糸のこ刃: よく切れるものを選んでください。これをけちると、安物買いの銭失いになりやすく、結局高くつきます。私は、Herkules のものが入手しやすいので使っていますが、このメーカーの刃は、ばらつきが比較的大きく、刃の性質が1本ごとに異なることが多いので、注意して使ってください。

ドリル刃: 日本製のものが精度、切れ味ともに一番です。0.5 mm から、3mm の刃を 0.5mm ごとの単位で持っていればとりあえず十分でしょう。

ピンバイス: 小径の穴あけは、モーターツールを使うよりも、手作業のほうがうまくいきます。手になじんで、しっかりしたものを選んでください。

以上の工具があれば、とりあえずケガキから車体の切り出しまではできますので、もし持っていないものがありましたら、工具店、金物屋、あるいは模型屋さんに今すぐ行きましょう!

ヤスリなど 2005年1月27日

ヤスリも必需品です。キット工作でもよく使用する工具ですので、手持ちの物でも大丈夫だと思いますが、工作する対象、たとえば窓の大きさに合わせて、ヤスリを加工することもありますので、必要に応じて購入してください。

紙ヤスリは、とりあえず #400, #800, #1000 程度のものがあればいいでしょう。

定盤はケガキ、ヤスリがけの際に必要です。厚手のガラス板でかまいませんので用意してください。写真は、ガラス製のまな板です。

さて、工具類の用意が出来たところで、ケガキ前の計測作業から入ります。

妻板設計 2005年2月16日

設計は、スクラッチビルドの大きな楽しみのひとつであり、工作の成否を左右する重要なポイントです。

1枚の板で車輌を作るのは至難の業ですからどこかで切り継ぎをしないといけません。キットを含め、切り継ぎの位置は、一般的に継ぎ目がもっとも目立たない場所、たとえばドアの線に沿って行うことが多いです。

今回のこの車輌の場合、ドアが大きいわりにドアと妻板の間のスペースがほとんどないと言う点と、折り曲げ機を使用しないで作成すると言う二つの観点から、ピンク色の部分、つまり側板と妻板の境目で切り継ぎを行うことにします。平面部分での切り継ぎではありませんので、半田付けが面倒になりますが、裏打ちをしてあげれば大丈夫でしょう。

定盤上での素材のヤスリがけ 購入した素材は一見きれいに直線、直角に切断されているように見えますが、微妙にぶれている場合がありますので、ケガキをはじめる前に必ず定盤(ガラス板でも可)の上に、紙ヤスリを置いて整形します。まずは一辺を直線に仕上げましょう。

このヤスリがけ整形作業はすべての切断面に対して必ず行うようにしてください。

[スクラッチビルドのお話]に戻る [続き]を見る


Copyright (C) 2005, 師匠 All Rights Reserved.